技術士事務所ALEITA(アレイタ)は、主にセラミックスの焼結プロセスに関して製造業の皆様が直面する課題に寄り添ってご支援しております。
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導入

銀焼結は、電子デバイスの高信頼接合を実現するために重要な技術であり、特にセラミックス基材(パワー半導体)と金属(基板)の異種材料接合に活用されています。
従来のはんだ接合では対応が難しい高温動作や高出力環境においても、銀焼結による接合は優れた熱伝導性と高耐熱性を発揮します。
本稿では、銀焼結プロセスの概要とともに、代表的な材料例や半導体業界における具体的な応用事例を紹介します。

第1章:銀焼結プロセスとは何か

所謂銀焼結とは、微細な銀粉末を加熱することで粒子間を接合させ、緻密な導電経路や高耐熱接合層を形成するプロセスです。
従来のはんだ接合(~250℃で融点を超える)と比較して、銀焼結は高温環境下でも機械的・電気的特性を安定的に維持できる点が大きな利点となります。
特にパワーデバイスや高周波デバイスでは、動作温度の上限が高く、放熱性が求められるため、銀焼結技術の重要性が高まっています。
銀粒子同士の拡散結合によって構造的に緻密な接合が実現し、さらに耐熱劣化に対しても高い抵抗性を示します。
半導体業界においては、パワー素子と基板の接合に積極的に利用され、上記の通り従来の鉛フリーはんだを超える信頼性を提供しています。
銀焼結による接合層の形成は、パワーデバイスの高温動作に対応するための必須技術となりつつあります。

第2章:セラミックス基材への適用上の特徴

多くの場合、銀とセラミックス間では熱膨張係数の差が存在するため、焼結プロセスでは応力緩和策が不可欠となります。
(銀 19×10^-6 /℃ @RT、SiC 4×10 ^-6 /℃ @RT~400℃、 Al2O3 7×10 ^-6 /℃ @RT~400℃)
対策としては、銀粉末粒径を小粒子径に制御したり、焼結助剤となるバインダー樹脂を添加したりします。

第3章:代表的な焼結条件とその制御

銀焼結プロセスを成功させるためには、焼結温度、雰囲気制御、圧力条件の最適化が不可欠です。
一般的な焼結温度は、250〜350℃に設定されることが多いです。
雰囲気制御では、銀の酸化防止を目的に窒素ガス(N₂)雰囲気下で焼結する方法が一般的ですが、大気下でも接合できます。
圧力制御については、ナノ銀ペーストを用いた場合には無加圧で焼結できるため、複雑な熱圧装置を不要とし、コスト削減が可能になります。
一方で、より高密度な接合が求められる場合には、圧力(たとえば20MPa)が加えられます。
特に、無加圧・低温銀焼結技術は、生産性向上と設備コスト削減の両立を図る手法として注目されており、
次世代パワーデバイス向けモジュール製造における有力な選択肢となっています。

まとめ

銀焼結は、はんだ接合を超える高信頼性・高耐熱性・高熱伝導性を提供し、製品の長期耐久性向上に大きく寄与します。
焼結温度、雰囲気、圧力の条件最適化によってプロセスの安定化と量産対応が可能となり、結果として生産コスト低減にもつながります。
今後は、無加圧・低温焼結プロセスのさらなる高度化により、より幅広いデバイス用途への展開が期待されています。

参照

焼結銀を用いたパワー半導体素子の接合技術の開発(日立製作所様)

焼結型銀ナノペーストの開発とその応用(バンドー化学様)

パワー半導体の高温動作を可能にするダイボンド材料及び焼結結合技術

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