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建設現場において最も多く発生している死亡災害は「墜落・転落」です。
これは構造物の特性や作業手順、点検体制の不備など、複数の要因が重なって起こるリスクです。
とくに高所作業を伴う足場、開口部、屋根作業などでは、わずかな判断ミスや設備の欠如が重篤度の高い労働災害を招きます。
本記事では、厚生労働省の調査データや最新の法令・ガイドラインに基づき、墜落・転落災害の現状、発生パターン、そして現場で有効な対策について整理します。

墜落・転落災害の現状と発生パターン

厚生労働省が公開した「労働災害動向調査(2023年)」によれば、建設業における死亡災害のうち約35%が「墜落・転落」に分類されています。
この数値は長年にわたり高い水準で推移しており、未だ根本的な改善が必要な領域といえます。
主な発生パターンは以下のとおりです:

  • 足場・作業床からの転落(足場未設置、腐食劣化、点検不備)
  • 屋根や開口部からの墜落(カバー・手すり等の不備)
  • はしご・脚立からの転落(角度・高さ違反、支持不良)

事故を防ぐ第一歩は、現場ごとに「落下経路」を明らかにすることです。
そのうえで、必要な保護措置(墜落制止用器具、手すり、養生材など)の設置状況を管理することが重要です。
設計段階・施工段階の両面からリスクを洗い出し、定量的に対応していく仕組みが必要です。

関連法令・ガイドラインとその実務上の意味

建設現場において墜落・転落災害を防ぐための基本となる法令は、労働安全衛生規則を中心に定められています。
以下に、管理者が把握すべき主要な条項を示します。

  • 第518条:作業床や足場における墜落防止措置の義務
  • 第519条:開口部の養生措置に関する規定
  • 第539条:昇降設備の設置・使用基準
  • 2019年改正 → 2022年完全施行:フルハーネス型の墜落制止用器具の義務化

建設業労働災害防止協会 (建災防) から「足場の組立等作業の作業指針」および「フルハーネス型安全帯使用作業特別教育用テキスト」が発行されています。
とくにフルハーネスの着用義務については、社内の安全講習や入場前教育の必須教材とすることで、運用レベルの定着が進みます。
これらの法令・資料は、単なる知識ではなく、「現場の運用ルールとして根づかせること」が重要です。

なぜ墜落事故は減らないのか、現場で求められる対策

建設業の死亡災害の約4割を「墜落・転落」が占めており、上記の通り装備や法整備が進んだ今もなお高止まりが続いています。
特に事故の8割が墜落制止用器具の未使用・未装着によるものであり、ルールや装備が「使われる仕組み」になっていないことは根本的な課題です。

労働安全衛生法第520条では、労働者は「墜落制止用器具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。」とあります。
対策の1つとして、先ずは法的な制約があることを認識することです。
事業者がそれを放置した場合、事業者に対して罰則(刑事、民事、社会、行政)が適用される可能性があります。
さらに労働者本人に対しても被害に加えて種々の処罰の対象となることが考えられます。
これを防ぐには、繰り返しの特別教育、日常点検、声かけルールなどで全員が例外なく守る雰囲気の現場文化を構築することが重要です。

まとめ

建設業における墜落・転落災害は、長年にわたって最も多い死亡災害であり続けています。
制度としての法令整備が進む中で、高齢化も進み、最終的な鍵となるのは現場での運用力です。
災害を防ぐには、単にルールを定めるのではなく、「守られるルール」として実際の作業に落とし込むことが必要です。
現場ごとに想定されるリスクを洗い出し、それに対して具体的な保護措置と運用体制を確立していく
日々の積み重ねこそが、建設現場の安全文化を支える基盤になります。

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