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導入

製造業における材料選定では、強度、耐食性、コストといった観点に加え、磁性の有無が製品設計や製造プロセス、最終製品の性能に与える影響も無視できません。
特に近年、磁場環境下での機器運用や高精度検査技術の発展に伴い、材料の磁性特性が設計要件に組み込まれるケースが増加しています。
本稿では、非磁性金属の代表例であるチタン(Ti)と、絶縁性・非磁性が特徴のセラミックスについて、それぞれの磁性特性と適用範囲を整理します。

第1章:チタン(金属)の磁性特性と設計・製造への影響

チタン(Ti)は一般に非磁性金属とされており、MRI装置用など磁場の影響を受けやすい部材に広く使用されています。
チタンは金属であり加工性に優れるため複雑形状の機械部品への適用も容易で、同様に脆性は大きくありません。
また純チタンは非磁性ですが、合金系チタンでは、添加元素により微弱な磁性を帯びる場合があります。
そのため最終製品の磁性特性を確保するため製造プロセス設計段階から管理体制を構築する必要があります。

第2章:セラミックスの磁性特性と適用例

セラミックス材料の多くは、非磁性かつ絶縁性を持ちます。
たとえば酸化アルミニウム(Al₂O₃)や窒化ケイ素(Si₃N₄)は、電気絶縁性と磁場に対する耐性を両立できるため、
磁気センサ周辺部材や高周波通信機器の基板として選定されることが多いです。
一方で、フェライト系セラミックス(例えばMnZnフェライトやNiZnフェライト)は逆に磁性材料として設計されており、
トランスコアやアンテナ部材など磁気応用分野に使用されます。
セラミックスを材料選定する際には、単に「セラミックス=非磁性」と考えるのではなく、製品仕様に適合する磁性特性を持つ種類かどうかを個別に確認する必要があります。
また、セラミックスは脆性材料であるため、強い衝撃荷重がかかる用途には適さない点にも留意が必要です。
磁性特性と機械特性を総合的に判断した上で適用範囲を決定することが求められます。

第3章:Tiとセラミックスの使い分けの概要

材料選定において、チタンとセラミックスは用途要件に応じて明確に使い分ける必要があります。
チタンを選定すべき代表的なケースは、高強度と軽量性を両立したい場合や、複雑形状部品への加工性を重視する場合です。
また、多少の微弱磁性が許容される産業機器フレームなどでは、チタンの加工自由度がメリットとなります。
一方、セラミックスを選定すべきケースは、より非磁性が必須となる磁気センサ周辺部材です。
選定時には、磁性特性だけでなく、機械強度、耐熱性、加工性、コストまで総合評価し、用途に最適な材料を確実に選定することが求められます。

まとめ

チタンとセラミックスは、それぞれ磁性特性・機械特性・環境耐性において異なる特長を持ちます。
単に非磁性を理由に材料を選ぶのではなく、設計要求、製造工程、検査工程を総合的に考慮した適切な選定が不可欠です。
特に磁場環境下での製品運用が前提となる場合は、成分保証や磁性試験結果を確認し、ロット管理まで含めたリスク対策を講じることが重要です。
設計・製造・購買部門が連携し、材料選定段階からリスクマネジメントを徹底することにより、品質事故防止と製品競争力向上を実現できます。
適材適所の判断こそが、製造業における持続的成長の鍵となります。

参照

大同特殊鋼様(チタン合金)

RICHCONN様(チタン磁性)

KOA様(磁気センサ周辺)

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